2013年6月12日

ヨーデル

五月某日

某ハンバーグチェーン店に行った。
ヨーコさんが「びっくらモンキー」とか「びっくりカルテット」とか言い間違えるあのお店である。
平日だったので私は日替わりランチ(その日はハンバーグとエビカツだった)と、
〜乳酸菌飲料〜と書かれた「ヨーデル」という飲み物を注文した。
注文を取りにやってきた店員さんに「ヨーデルはいつお持ちしますか?」と聞かれて、
「もう大丈夫です。」と言って、あ変な言い方しちゃったかなもう大丈夫だなんてと思うのも束の間
「ではすぐお持ちしますね。」と店員さんは受け取ってくれて後、3分もせずに白い飲み物はやってきた。
「ヨーデルのお客様。」と聞かれ私は喜んで右の手を上げた。乳酸菌飲料を欲していた。
ついてきたストローを開けるのに少し四苦八苦したが、
晴れて出たストローの先をひたして吸い込むヨーデル。
「まずい!!」
それが私の第一声だった。もう一口飲んでみた。
「まずい!!」
それが私の発した第二声だった。
なんなら第三も第四もそうだった。
目の前にいた母にヨーデルを差し出してみた。
「まずい!!」
それを飲んだ母も同じことを言った。
しかし第二声は少し違った。
「これ、、、ミルクじゃない?」
え?ミルク?
そう思って再び飲んでみた。
なるほどミルクと言われればミルクのような味がする。
というかやはりこれはミルクではないか!?
ミルクと思えばただのミルクの味のミルクも、
ヨーデルと思って飲んだらこんなにまずい飲み物になるのか……
新たな発見を静かに感じながら迷ったものの、
私は店員さん呼び出しボタンを押した。
すると今度は別の女性店員がやってきた。
私は勇気を出して言った。
「ちょっと変なことをおうかがいしますけど、
 これは、本当にヨーデルですか?」
ハンバーグを注文してチキンの照り焼きが来たなら良い、
ビールを注文してトマトジュースが来たなら良い、
それなら誰が見ても「異なるもの」である。
しかし私の頼んだヨーデルは白色で仮に中身がミルクだとしても白色だ。
まさか「ちょっと飲んでみて。」などと初対面の女性店員に言える訳がないし、
困った結果このような言い方になってしまった。
少しぽっちゃりしてメガネをかけている女性店員は、こう答えた。
「ヨーデルだと思います。」
これ以上何をどう伝えることができるのか、私は、
「ヨーデルは、牛乳のような味なのですか?」
と聞いた。
するとそのぽっちゃり店員は
「はい、牛乳を割るので牛乳に近い味をしています。」
と言った。
牛乳に近い…。
「8割方、牛乳ですか?」
「はい、そうです。」
とそのメガネ女性は言った。
「分かりました、ありがとうございました。」
私は迷い無く残すことにした。
やることはやった。

中身に確信のもてない飲み物をテーブルの右端にやり、
私の人生でこれ以降ヨーデルを注文することがあるかないかを考えていると、
注文をとった方の女性店員がやってきて、
「すみません、別の飲み物だったようです。」
とだけ言ってその偽ヨーデルをサッと取って去って行ってしまった。

「・・・・・・・。」

乳酸菌飲料だと思って乳酸菌飲料でなかったものを飲んだ時のガッカリ感を思えば、
もうちょっと謝りに必死さがあってもいい気がしたが、
改めてその女性店員が持って来た白い飲み物はまさしく乳酸菌飲料ヨーデルで、
何の迷いもなく飲む一杯目より数段美味しく、喜びを感じたのだ
ヨロレイヒー