2020年8月4日

悩まないプロレスラー

 このコロナカのなかで、いつもはあれやこれやと引っ張りだこで連絡のとれない人と話ができたり、色んな人の新しい面が見えて新鮮だったり、それからずっと長く連絡をとっていなかった人となんとなく接触がもてたりした。

 そのなかに、プロレスラーのアントーニオ本多さんがいる。

 アントンさんとは、私が大学生のとき、とある劇団の芝居で共演したことがきっかけで知り合った。そうでなくともアンさん(さらに略す)は私の所属していた演劇サークルの忘年会か何かにときどき出入りもしていた。私は当時アンさんのいた武蔵野美術大学で、初めてプロレスを見た。

 アントンさんのツイッターを数年前にフォローし、様子を見ていると、文章がずいぶんスピリチュアル的な要素をはらんでいることに気づいた。ヨガ、瞑想、それからユーフォー。その傾向は緊急非常事態宣言な最近とくに強くなってきており、アンさんが配信している動画のひとつではひたすら水の話をしていた。私も興味のあることもあったし、アンさんが気になっていそうなことを伝えたいという思いもあったので、久しぶりに連絡をとってみることにした。

「アンさんは、ベジタリアンなんですか?」

聞くと、そうだ、という回答が返ってきた。

「魚も食べない?」

食べないねぇ。

「米は?」

と聞くと、お米大好き、米は野菜。という返事だった。

そして豆はやはり豊富に常備してあるらしい。

ベジタリアンと聞くと気になっていることがある。

どのような調理法があるのか、おいしいのか果たしてその料理は、ということだ。

意を決してそれを尋ねると、

「わたしの料理はほぼ3種類なんです」

とアンさんは言った。

——

《以下、私のとったメモを丸写し》

【パターン①】
鍋。

入れる野菜は、人参、キャベツ、高野豆腐、生姜。だいたい味噌ベース。

【パターン②】

納豆を2~3パックと、豆腐半丁と野菜をご飯にのせる。

しょう油、酢、黒こしょう、ごま油、隠し味のはちみつをかける。
お椀の淵のほうに適当に回す感じで。

野菜:最近はカイワレダイコンがブーム。キャベツや白菜もよい

【パターン③】

①と②のデザートとしても併用されることが多い。要はデザート。

面倒くさいときは量を増やして主食にする。

材料、

・豆乳ぐると

・バナナ

・はちみつ

・レーズン

・くるみ

・ときどききなこ

豆乳ぐると:豆乳のヨーグルト。アンさんの肌感覚だと流行りはじめてる。スーパーに置いてる銘柄増えていた。これは多分くる

——

「・・・飽きません?」

と聞くと

「飽きないねぇ」

とアントンさんは言った。

何より健康になったらしい。

(それは数年前から行っているヨガの影響もあるのだろう。)

結果、体重が減ったらしい。

105kgあったんだけど、今70kgぐらいじゃないかな」

アントンさんは今もプロレスラーだ。

体重が減って周囲から心配され、どうしたものかと考えている。

そして今日も朝3時に起きて1時間のヨガを行う。



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2020年8月3日

ある日の恋人

 恋人の家には、とある山の上に初めて山小屋ができるまでの記録を綴った写真集があり、二人でそれを見ていた。私たちの暮らす平地から離れた、高い高い山の上で、木が運ばれたり、木が組まれたり、人が協力したり、少しずつ小屋ができ、山小屋として機能していくまでの記録。その本は、山小屋の完成に向け、あらゆる章が時期ごとに分けて区切られていた。前書きのようなプロローグを越え、序盤のページをめくり、章の題字を私はなぜか声に出して読んだ「そうめい期」。
その瞬間、恋人の顔が瞬時に硬くこわばった。「・・・れいめい期、だよ」。
“黎明期”。

今まで穏やかだった彼の顔は、困ったという文字を顔にしたらこんな風になるだろうなという表情だった。「あ、そうなんだ。れいめいって読むんだ。」もちろん私は恥ずかしかったが仕方ない。実は漢字は得意じゃないのだ。そんなこともあるだろうと思って次のページをめくった。そのあと、山小屋はいろんなことがおきながらも順調につくりあげられていった。ぶじ立派な山小屋が完成した本を閉じ、私はなにをしていたのだったか、たしかお風呂を入れに行ったのだったか、恋人は携帯を眺めていた。さらに時間が経った。ふと恋人が携帯から顔を上げ、口を開いた。
「そうめい期って間違える人、けっこういるみたいだよ。」
そうめい期とれいめい期を携帯で調べていた。
フォロー、だった。
それだけ私が恥ずかしい思いをしたと思ったのだと思う。
「そうなんだね。」と私は答えた。
今、一人で平らな家にいて、いつかの恋人の優しさを思う。

(2020年6月・書)モレスキンノート

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2020年7月5日

眼留華離

6月某日

喫茶店・日曜社のヨコケイから「なんか(人生)進みゆうやか〜!」と言ってもらった理由は私がメルカリを始めたから。借りていた本を返しに行き、本を入れていたエコバッグも差し上げますよと言ったが「売れるかもしれんき!」と優しく突き返された。

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今もし恋人ができても私はメルカリの話しかしないだろうから申し訳ないなと思う。
それにしてもメルカリ内のユーザー評価というものは、お互い出品者である可能性の方が高いわけで、まあ購入のみのために利用しているかつての私のような人もいるとは思うが、とにかくいつか自分も評価されるかもしれないのだからアテにはならない。
それにコメントとかも早くした方がいいらしい。社会か。
みんなそれはマメに「お取引ありがとうございました」、とか、「またご縁がありましたらよろしくお願いします」、とかやっている。こんな物と物だらけの天空の城みたいなメルカリワールドでご縁もへったくれもあるのかと思ってしまう曲がりきったへそをもつ私は絶対にまたご縁がありましたらとかいう可能性が低すぎる期待など書かない。
あとやってくるコメントは今のところ値下げ交渉だ。今のところ100パーセントの確率だ。プロフィールに「値下げはしていません(混乱してしまうため)。」とていねいに書いているのに! プロフィールを読んでほしい。ていねいに理由まで書いている。こういう、プロフィールを読まない人に限って値下げをしてくるのか。私がもし値下げしようとしたらかなり慎重になる。相手のプロフィールを隅から隅まで読んで、値下げ不可でないと確認できた場合に初めて値下げを提案する。しかも希望の額を添えると親切かもしれない。必ず「もし可能でしたら」、とか「うれしいです」、とかいう遠めからの円を描くようなふわっとした形で提案する。もちろん相手が断りやすいようにだ。断る方もつらいだろう。
昨日も値下げを請うコメントがやってきた。「初めまして〇〇(なんか横文字の名前)です。こちら少しでもお値下げは不可でございますか? ご検討お願いします」。もちろん面倒くさいなと思った。なにせプロフィールに値下げしていないと書いているからだ。マンションにも出していない、私の表札のようなものだ。はじめまして、と偽名を名乗るくらいなら、私のプロフィールを見てほしい。コメントの、否定(不可)の用語と「〜でございますか?」の語尾のセットも若干鼻についたが、“少しでも”という言葉に切実さと、もしかしたらプロフィールを読んだ上で提案しているのかもしれない。そう思った。この人にも何か理由があるのかもしれない。
夜だったし返信が面倒だったので、一晩ねかすことにした。翌日、太陽の光のなかでもう一度出品していた品(本だ)をメルカリ専用BOX(段ボールだ)から引っ張り出し、相談した。本は「50円ならいいだろう」と言ったので、800円のところを750円にすることにした。返信しようとしたらメルカリがメンテナンス中とのことでアプリを開けず、また1〜2時間後にこう返信した。
「返信が遅くなり失礼いたしました。
 はじめまして。
 基本的にお値下げはしていないのですが、少し前の本ということもあり、心ばかりではありますが750円ではいかがでしょうか?」このメルカリワールドでは“ご縁”という言葉同様、“はじめまして”も怪しいものだと思っているが相手が“はじめまして”と言ったら“はじめまして”と返す律儀さ、“基本的に値下げしていない”プロフィールは見たのか? というやんわりとした問いかけ、返す前にきちんと辞書で意味を調べてGOサインをもらった“心ばかりではありますが”という謙虚さがポイントだ。ひとつの返信にポイントが3つもある。すごい。
数時間後、返信がきた。「ご連絡ありがとうございます。反応がなかったので、お値下げをお願いした事で不愉快になられたのかと思いまして、他で購入してしまいました。せっかくご検討頂いたのに申し訳ありません。」最初のコメントからまだ24時間も経っていない=反応がない、になるのか。社会か。もちろんよそで買ったのはいいし、1500歩譲って“反応がない”というのも許す。でも勝手に人を不愉快に仕立て上げるのだけはやめてほしい。5万7000歩譲ってそう考えてしまったのもしょうがない。でもわざわざ私の出品しているコメント欄に不愉快風を残す事はないだろう。そんなにていねいに書くならこれでいい。
「生来せっかちなところがありまして、あなたさまからの返信を待ちきれず、他のところで購入してしまいました。お恥ずかしい限りです。メルカリという、たくさんの商品が出品されているひとつの社会のような場所で、また何か言葉や物を交わすことがあるのかそれは定かではありませんが、もしも、ご縁がありましたら、また別の品をどちらかが発見することもあるのかも、ないのかもしれません。この度はご検討をいただいて、本当にありがとうございましたとメルカリの世界の私が申しております。」
そして今回、素直にコメントを残していいなら私はこう返す。
「あなたとは友達にならないと思います。」



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2020年6月28日

悩みがあるのだが

悩みがある。

朝の6時台に、隣のマンションの住人が玄関の扉を開け、
数人が大きな声で行ってらっしゃいとか、
はたまた子どもが行かないでと泣き叫ぶなどを繰り広げるのだ。

それで、起きる。

平日は毎日だ。

6時台は、早いのではないだろうか?

友人・浅野に相談する。

「それは、やだねぇ。たしかに6時は非常識と言っていいかもねぇ。」
「だけど、やだって言いづらいね。行ってらっしゃいってすごく幸せな光景じゃん。」

といいつつ、浅野はふたつの案を提案してくれた。

その1、
早く起きる。
先方より早く起きる。
「早起きになっていいかもしれないよ、ハマー」

その2、行ってらっしゃいと言う。
そちらの朝の放たれる大きな音によって起きてしまっていますよ、
やめてほしいですよ、ということをアピールするため、
行ってらっしゃいの儀式が行なわれているときに私も玄関から顔を出して行ってらっしゃいという。
「3日くらい続けたらやばい人だと思われて、こそこそしてくれるかもよ?」

ふむ。

その1に関して。
私もその案を考えてはいたが、改めて友人が提案してくれるとなんだか底知れない喜びを感じた。

その2に関して。
これは、問題がある。まず、起き抜けにそれほどの瞬発力がないこと。
主に子どもの声で目を覚まし、事態を把握するのに数秒。それからベッドから身体を起こすのにおそらく1分近くかかる。そして立ち上がり、玄関まで行って扉を開き行ってらっしゃいを言う。その頃にはお父さんだか誰かはすでに駐車場あたりまで辿り着いているか、車のドアに手をかけているか、少なくとも隣の玄関周りには誰もいないだろう。私は幻の存在に行ってらっしゃいを言う奇妙なフェアリーとしてマンション史に名を残す。

その2についてはもうひとつ、問題がある。
仮に私の行ってらっしゃいが間に合った場合、
見知らぬ人から行ってらっしゃいを言われたお父さんはきっと戸惑うだろう。
髪がボサボサで、上の服を下のズボンにインした形でパジャマを着こなす名前さえ知らない女に恐怖すら覚えるかもしれない。
それでも……、「行ってきます。」と言うと思うのだ。彼は。
あまりのとっさの出来事には、習慣が勝ると思うのだ。
いかに見ず知らずの、あやしく、初対面の人間であろうと、
「行ってらっしゃい!」と突然言われたからにはこう返すと思うのだ、
「行ってきます。」。私はその(私から見ても)見ず知らずの男性から恐怖あるいは戸惑いの表情を浮かべながら行ってきますと言われるのが極端にいやだ。すごくいやだ。予想するだけでいやだ。

今、5時半に起きている。




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2020年6月21日

本を読んだ友だち

5月の日記から抜粋の5月◯日

昨日の夜に思いついて、木曜日しか販売していないロールケーキを買いに行くことにした。マスクをつくってくれた友人に、お礼もかねて「ロールケーキ買っていくよ」と連絡した。店は12時〜、駐車場がないこともあって11時55分を目指してついたら長蛇の列。ロールケーキを求めて、ロールを描きそうな人の列。20分並んだが、7〜8人先の人で売り切れる。「売り切れたわ〜」という誰かの声で気づく(本を読んでいたため)。結果、ただ手ぶらで友人の家に行く。やはり人から淹れてもらったカフェオレは美味しく、おかわりを求めた。

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『本を読んだ友だち』

「ロールケーキ、買えんかった・・・」無念の電話を、ロールケーキ屋の前からかける。「えっ、そうながや、全然いいで!」と友人はへっちゃら。そりゃそうか、私が勝手に思いついて、私が勝手にもちかけた計画だ。「どうしよう、」当初の目的"ロールケーキを買って持って行く"がなくなった今、もう帰ろうかと思う。友人「私はどちらでも!」そりゃそうだ、(以下リピート)。「でも、」と友人は言う。「ちょうど私もひろじに会いたいと思いよったがよね〜。喋りたいことがあって。」

その"喋りたいこと"は何か聞くと、
読み終わったばかりの本の感想なのだった。

西加奈子・著『サラバ!』
2014年11月3日に刊行され、その当時に私も読んだ本を、
今読み終えた友人が感想を話したいと言っている。

手ぶらだがなんとなく行くことにした。電話でもいいような気もするが、友人の声からは直接でないといけないような切迫した空気を感じた。

たどり着いた友人の住むマンションの号数が思い出せず、
私は2つに絞った候補の家の前で匂いを嗅ぎ、
こちらだと思った方のピンポンを押した。
すると部屋着+メガネの、オフスタイルのよっちゃんが扉を開いた。
私が座布団の上に座ると同時にはじまったその感想は、
一言で言うと、熱かった。

「なんか、、なに!?」
「ほんとに、すごいなと思った!」
「なんかね~とにかくね~ひろじに言いたい!」
「途中までは主人公と同じ気持ちよねぇ!」
「あなたの買った家だよ!?」
「なんでそんなに許せるのか、みたいな感じやって。」
「最終まで読んだらこういう背景かとわかったがやけど、」
「なんか、対比!?」
「幸せにならんどこうと思ったこの人が何をやっても幸せやったが!」
「けんど、絶対に幸せになってやるって思ったこの人が幸せになれんかったが!」
「この、対極とか!ねぇ、すごくない!!?」

そしてその興奮を止ませようとすることもなく友人は

「西加奈子さんはいつもこういう話なが!?」

と私に問う。
・・・こういう、、って?

「こう、、割とこう、、
人間描写っていうか、日常っていうか、、!」

私は思う。
小説って大体そうなんじゃ?

「そうなんじゃ?」

あ、ごめんごめん、つい頭の中で書いた文章をそのまま口に出してしまったみたい。

「そうなんじゃ、クエスチョン!」

そうして友人は、ひとつのひらめきにたどり着く。

「私、小説読んだことないかも。」

*小説:作者の奔放な構想力によって、登場する人物の言動や彼等を取り巻く環境・風土の描写を通じ、非日常的な世界に読者を誘い込むことを目的とする散文学。(新明解国語辞典第5版より抜粋)

いや、まったく読んでいないと言ったらウソになる。
だけど思えば中高時代、よっちゃんが前のめりに読んでいたのはハリーポッターだった。
(それはよっちゃんだけじゃなかったけど。)
彼女がそれ以外の本を読んでいるのを教科書以外では見たことがない。

「私、本読んでこんかったきこんな語彙力がないがや!」
「もっと昔から本読んじょったらなんか、私、違う人生になっちょったかもしれん!!」

よっちゃんは今、小説を読み始めた。
ファンタジーより現実味を帯びた「本」に面白さを感じ始めているそうだ。
私はむしろ逆で、今こそファンタジーを求めてる。私はつづけて言った。

「学生時代、ハリーポッターも読もうと思ったけど、
途中でやめてしもうた。なんか、追えんかったがよね。」

と言うと

「ハリーを?」

とよっちゃんは言った。
私が言ったのは文章の意だったが、
友人の瞳の中にはまだ学生時代に培った魔法の火が根強く灯っているのだった。

 

 

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2020年6月14日

ぺらぺらの5月(日記)


5月◯日

淋しいって、すごく嬉しいってことだったんだ。

5月◯日

いとこからゲームを借りるため、久々の早起き。
用事があり、法務局へ。重鎮のような人物が「それでは私が教えてさしあげましょう」という雰囲気で現れるときのワクワクたるや。
帰路の途中、公園でアイスカフェオレとチーズドッグを食べた。

5月◯日

朝、前につくって冷凍しておいたパンケーキを食べたような気もする、覚えていない。白湯を飲んですぐ冒険(いとこから借りたゲーム)。すると午後未明、セーブしたデータが消えてしまう。いとこが残していたセーブデータがかろうじて残っていたので、そこからやり直すが、夜、そのデータも消える。
昼はオムライスをつくる。
夜は味噌汁、ごはん、昆布の佃煮と海苔。

5月◯日

メイちゃんの誕生日。旦那さんが母の日「メイにもあげたい」といって、花もプレゼントしてくれたそう。いい話—。私は昨日メイちゃんから問い合わせを受けた、子供におすすめの歌の伴奏を録音して歌詞と合わせてメールで送る。データをプレゼント。

5月◯日

散歩で見つけた花屋で、母の日の花を買う。
◎買った植物メモ/ゆうぎりそう、ブプレウム
花屋の人からやんわりと「ご高齢ならいいけれど、少し地味では?」と提案を受けたので、一本ピンク色のカーネーションも足した。

5月◯日

もう起こらないと思っていた「何もできなくなる」が発症する。
夕方、ぽとぽと漫画を持ってきて読んでいたらその中に餃子をつくるシーンがでてきて、このままだと何も食べないで一日が終わると思ったので友人に「餃子いっしょにつくらない?」とラインする。快諾の返事。
ようやく立ち上がり、生まれて初めて餃子の皮をつくる決心をする。
いつだったか、「皮からつくらない餃子は餃子じゃない」と伊丹十三がいっていたことがずっと胸につかえていた。
我が家にやってきた友人に、具の方を頼み、私はとにかく皮に専念する。
本当は強力粉もあったほうがよいのだが、強力粉を買ったところで今後強力粉が活躍する場面があるか自信がなかったので、今回は薄力粉だけでつくる。
包む段になってはじめて二人で作業を開始したが、皮が、やわらかい。
何をつくっているのか分からなくなる。

かろうじて包めた完成品を
「餃子みたい!」と言った友人も同じ気持ちだと知る。それは禁句だと思う。

無口で餃子をつくったり無口でひたすら餃子を食べたりする。元気がでた。

5月◯日

餃子のタネが余っていたのでまた餃子をつくった。
つくりながら、「今度は餃子の皮が余ったので明日を餃子をつくるかもしれない。loopな気持ち」と呟こうと考える。結果使い切れたので呟かなかった。

5月◯日

友達の職場に新しくやってきた人が
すごく新しいことを考えていたり
やる気のある人だと分かったという話を聞いた。
もう一人新しく来た人は、そのもう一方の人の話を聞いて、
「俺なんて毎日、クローゼットの中をどう片付けるかしか考えてないっすよー!」と言っていたらしい。私はその話を聞いて、ああ新しい人と出会うっていいなと思った。

5月◯日

不燃ゴミの日がひと月のなかで一番パワーを使う。

5月◯日

食べたもの:パルム(アイス)、焼きそば、雪の宿、パルム(アイス)、味噌汁

5月◯日

芝居をしていたときでもこんなに聞いたことがないというぐらい「群像劇」というワードをたくさん聞いた。RPG(ロールプレイングゲーム)の説明をしてくれる、いとこの口から。

5月◯日

ノーマルなパンツも略したらノーパンだ。

5月◯日

元気がないなぁと思っていたけど、眠いだけかもしれない。春!

5月◯日

18:00頃、堀川夫妻からLINE電話。
はなから動画通話でかかってきた。
かけてきたのに、二人は夕飯を食べている。
「そろそろ、かけ時かな〜と思って〜〜」と言いながら、
なすの味噌炒めとフライドチキンとピーマンの炒めものとサラダ。
いや、メニューじゃなくて二人は夕飯中に私にライン電話をかけてきてる。
家族でもなかなかしない行為だ。
私もバランスをとるためパルムのアイスを食べた。

5月◯日

ちょうど日が昇るころに腹痛にみまわれ起床。どうして。
また寝て起きたら13:11だった。よく寝る。

5月◯日

ホイップクリームを買ってきて泡立てる。
ホットケーキ、さしみこんにゃく、コーヒーという我ながらどうかと思う組合せ。さらにその後ビールを飲む。アルコールは夜より昼がよい、気持ち的に。
「ビッグバード、嘘発見器にかけられる」という動画を見る。セサミは味方。

5月◯日

今日は昼過ぎに起き、活動時間が限られていたため一度もゲームをしなかった。
喜んでいいことなのか。

5月◯日

早朝から何度か起きていたように思うが、あまりに曖昧で
夢かもしれない。昨日は急いで眠ったので朝、お風呂に。
またホットドッグ。今週はホットドッグを3回食べたことになる。
ウインナーの味に疑問をもち始めたので、ウインナーも自家製がいいのかもしれない(食べるなら)。「スーパー8」観る。勇気のある少年。
50分散歩。戻って1時間ピアノ。20時〜ごはん。その後くみさんと電話。
くみさんが「私も見るよ」と言ってくれたのですでに見た映画を、昨日も今日も見る。今週で言ったら3回、トータルでいったら4回みたことになる。
返却時間ギリギリまで映画を見たためか、朝6時まで眠れず、深夜4時にはちみつトーストを食べた。

5月◯日

「お相手さん」っていい方、面白い。

5月◯日

日々、好きな人との会話の録音を家で一人で聞いてニヤニヤしている私ってただの変態なのではないかと思いあたる。しかも相手が録音を知らない場合もあるので、なおのこと。(ラジオをつくるためという大義名分もある)

5月◯日

くみさんと話していると、俳優の素質ってミューズ感なのではないかと思う。必須ではなくても。くみさんのほんの一言で、すごくやる気が出たりする。いや、一人でもやる気溢れておれ!という感もあるけど、それでも。ミューズの力たるや。一人でやる作業も好きだけど、人とつくるのも好き。

5月◯日

昨日の夜に思いついて、木曜日しか販売していないロールケーキを買いに行くことにした。マスクをつくってくれた友人に、お礼もかねて「ロールケーキ買っていくよ」と連絡した。店は12時〜、駐車場がないこともあって11時55分を目指してついたら長蛇の列。ロールケーキを求めて、ロールを描きそうな人の列。20分並んだが、7〜8人先の人で売り切れる。「売り切れたわ〜」という誰かの声で気づく(本を読んでいたため)。結果、ただ手ぶらで友人の家に行く。やはり人から淹れてもらったカフェオレは美味しく、おかわりを求めた。

5月◯日

昨日は久々に元気がなかった。
たしかけっこう長くRPGをやった気がする。
1時間の散歩はした。
あと個人商店で、そら豆とうるめを買って、夜焼いて食べた。
私は魚に詳しくないので「これはどうやって食べるんですか?」といちいち聞いてる。「焼いてもいいし、あとは、す×××もいいね」と言われ、「吸い物?」と聞き返すと「ちがう! すぅ〜(酢)のもの!」と返ってきた。ドキドキして保存に関しての質問をし忘れた。まだまだ発展が途上。

5月◯日

携帯を見ると11時11分だったからうれしくなり部屋の中を駆け巡ったら家具の角で足の小指を打ち、今日は靴下もはけない。

5月◯日

今日は久々に近所でエビフライ定食を食べる。帰ってから衣の中身が前のエビと変わっていたことに気づく。でも久々に洋食らしい洋食を食べて、美味しかった。

5月◯日

久しぶりに母と会う。瞳を潤ませて「お母さん、好きな人ができたかもしれん……」という。「えっ、誰!?」と聞くと「ビル・ゲイツ。」とのこと。娘にできることは「そうか。」と言うだけ。

5月◯日

とりあえずポパイの「いいデートしてる?」号を捨てた。

5月◯日

図書館の人からついに「いつもありがとうございます」と言われる。


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2020年6月11日

山田

友達が「何もしてないってことはないよ」と言う。
わたしはそれを近くにある紙にメモする。「なにも、してない、ことは、ない」
するとそれを見た友達が、「たしか昔も喫茶店でそうやってメモしてたね」と言い、私はたしかいつかも誰かが私に「何もしてないときはない」と言ってくれたことを思い出す。山田だ。



山田は大学1年のとき、第2外国語で選択していた中国語の授業で出会った。
山田は秋田から出てきたばかりの男で、私たちは何がどうかはよく分からないけどとにかくなんとなく気が合い、多分いろんな話をした。
高校時代の名残で唯一ドッキリ誕生日会を企画し開催したのも大学時代では山田が最初で最後だったと思う。「こんなことは初めてだ」と言っていた。

とにかく大学で出会った男友達の中で、あんなに話をしたのは2人くらいだ。

大学を卒業してすぐの頃、私は失恋をした。
いや、始まってもいなかったので失恋とも呼べない、とにかく気持ちの悪い関係だった。
ある日その人も交えた飲み会があり、
開始が遅かったので朝まで続きそうだったが、私は一緒の場にいることがどうしても辛く、
その場を先に出ることにした。

終電もとうに過ぎた駅前でぼんやりと立って、
そういえばこの駅は山田の家からそう離れてはいないんじゃないかと思った。
当時はスマートフォンもないご時世だったので、
私は携帯電話で、山田に電話をかけた。
覚えていないけど、それで、山田の家までの道を聞いたんだと思う。
たしか環七だか環八だかの大きな道をただまっすぐ
お気に入りのソニーのウォークマンで、
当時好きだった音楽を爆音で聴きながら
山田の家まで歩いた。1時間以上かかったような気もする。
見覚えのある白いマンションに辿りついて、
私は山田の家に入り、山田の部屋のベッドで、大量に泣いた。
今となってはよくもあんなに泣けたものだなと思うくらい泣いた。

数年後、あのときのことを振り返って
「山田、あのとき、ずっと背中向けて机でパソコンつついてたよね」
と言うと、
「なに言ってんだ、あれは、音楽を選んでたんだ」
と山田は言った。

ビル・エヴァンスだったそうだ。
ひたすら泣いていた私は音楽が流れていることさえ気づかなかった。
今はあのときのように泣くこともなくなった。
あのときあんなに泣いたから、かもしれない。


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2020年5月28日

【6コマまんが】浅野と私はお笑いともだち(最終回)

★ 前回のつづきです ★






 

 

 

 

 

 

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2020年5月21日

深夜のホットドッグ

夜三時
昨日も朝五時まで眠れなかった。今日も二十分ほどは眠れたらしいが
目が覚めてしまって二日目ともなると開き直り、昨日四時に行った行為
ベランダに出てUFOを探す、をする。昨日は二機見れたが今日は一機
も見られなかった。五分も外にいないのだから仕方ない。部屋の中に入り、
ホットドッグをつくることにする。キャベツを刻みながら 何をしてるんだろう とか
寝ろ! といういくつかの声が聞こえるがいつか未来の深夜、大切な人が眠れ
ず困っているときに深夜レシピ、などと言ってこのホットドッグをつくるところを考え、
いや、こんなに眠い中でつくるレシピが何の記憶/記録に値するもの
かというような文章を頭の中で書きながら手はホットドッグをつくりながら
出来上がって食べたホットドッグは予想外に美味しかった。ホットドッグを食
べながら、今世紀一番の眠気がやってくる。このような有様ではどこからが夢で
どこまでが現実か分からなくなりそうだと思いこの文章を残す。
これを明日の私がみたら「ああ あのホットドッグは本当だったんだ。」と思うはず。



☆ホットドッグのポイント☆ 好きなパンとお気に入りのウインナーを使うこと

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2020年5月17日

フルーツパーラー修行

友人・プリンケツ久松と行ってみたかったフルーツパーラーに行く。

その日私は高知から東京についたばかりで、
飛行場からそのまま美容院に直行、
そのあと久松とフルーツパーラーに行く予定を立てていた。

美容院でのカットが完璧に終わり、移動する前に久松に電話。
すると、
「これから行くフルーツパーラーについてネットで調べたら、
子ども連れでもOKだけど、
口コミによると、子どもに厳しいらしい」
という情報を仕入れていた。
母親ともなると用意に抜かりがない。

私は私でスーツケースやらの荷物を久松の家に預けたい願望もあったので、
子供が寝たら現地集合、子供が寝ていなかったから久松家集合にする。
(久松の家はそのフルーツパーラーから徒歩圏内)

「今寝たき、現地集合で!」

とラインがきて、飛行場についたそのままの状態でフルーツパーラーに向かう。
建物前には、がっつり寝た子どもを連れた久松、用意は万端。
いざ!
と入ろうとすると入り口に「大きなお荷物の持ち込みは厳禁」と書かれていた。
私はスーツケースと、フォークギターと、なんならイケアの青い袋を肩からかけている。
子供は寝ているし荷物も静かだが、大きさだけはごまかせない。
二人+赤子で立ち尽くす。

眠る子供を連れ、私たちはしぶしぶ久松の家に戻る。
フルーツパーラーでだけは怒られたくない。
荷物を置いて再び出陣。
子供が起きる。

改めてたどり着いたフルーツパーラーの建物。
店のある階へと登っていくと、
入り口の前には「携帯電話の使用は厳禁」「禁煙です」
「店内で待ち合わせはできません」「店内での通話はご遠慮ください」
「香りの強い香料を御使用のお客様の入店をお断りする場合があります」
などなどなど、主に赤青黒の3色で手書きされた
大量の張り紙が貼られているのだった。若干重複するものもふくめて。

家からここまでくる道中で、久松が教えてくれた。
「子供スナックの持ち込みもダメらしくって、
子供用には、すぐ出てくる、100円のバナナがあるんだって」

人類の起源はサルだと信じて疑わない店主なのだろうか。

そして店内で、ぐずり始めた子供の様子を見て、瞬時に「バナナをください」と注文した友人の適応能力に私は感動すら覚える。

私たち人間は苺パフェとアボカドトーストを注文した。
デザートも主食も食べたい年ごろなのだ。
パフェは分けられたらと思っていて、
「スプーン、ふたついただいてもいいですか?」
と聞くと、若い女性店員から
「あまりシェアをすすめていないので、
スプーンはひとつしかおつけできません」
と言われそもそも硬くしていた背中に緊張が走る。

イメージしてみる。

ひとつのスプーンでひとつのパフェを食べる。

距離が、近すぎる行為ではないか。

いくら中高同じ学校で過ごしたからといって、
それから10年以上の時が経っている。気にかかることも増えた。

「私、平気で」
という久松に、私は大人になってから新たな「好き」を加える。

しかしそこにやってきた子ども用のバナナにフォークがついてきていて、
「フォークだ!!!」
と私たちは歓喜する。
「私、これでパフェ食べるよ!」
と友人はフルーツパーラーで叫ぶ。

(叫ぶのは厳禁、という張り紙はなかった。)

数十分後、一足先にアボカドトーストがやってきて、
パンの上に乗せられているだけの柔らかいアボカドがパンの上を滑り、
ぽろぽろと堕ちる。「フォークがあれば」と思うけれども
さきほどの厳粛な態度を思えば「フォークをください」と聞く事ができない。
子供が泣いたらバナナを強いる、
人類の起源は猿だと疑わない店主だ。
つるつる滑るアボカドも「指でつまむことをおすすめしております」と言われかねない。
赤子の使っているフォークはこの先、久松がパフェ用に使うことになっている。
その間にもアボカドはオイルにまみれパンの上を戯れ
私の指はマヨネーズなどで濡れる。
店員の様子を5分ほど伺い、
本日最大の勇気でやはり聞いてみることにする。
「パンの上のアボカドをすくいたいのでフォークをください」と言う。
きちんと理由を言ったところがポイントだ。
するとすんなり、フォークをくれる。

人のこだわりは読めない、と思う。いつだって。

いったんは安心したものの、
今後、まだ何が起こるかわからない。
次、いつ来るか分からないパフェに備えて、
私はトーストで使ったフォークを机の下で握りしめたまま、
数十分間のおしゃべりにいそしんだ。


(2020年2月)

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