2022年12月11日

冬のある日

いつ頃からか暖房器具は石油ストーブを使っている。
去年、ファンヒータータイプも導入した。
東京には、このファンヒーターだけを持ってきた。

石油ファンヒーターのための灯油を、私は近所の米を売ってる商店に買いに行っている。
灯油缶を手持ちで、いつもひょこひょこ行く。おそらく家族経営のそのお店は精米もやっている米屋によくある販売っ気のない空間で、今日はそこでおばあちゃんと近所のおじいちゃんがコロコロのついたタイプの事務椅子に座り、向かい合わせで世間話をしていた。

その向こうに座っていたおそらくは嫁さんと思われる50代くらいのお方が私のことを察知し立ち上がり、二人で灯油の出る機械の元へ移動する。それにしても私を見ると「=灯油」と迅速に判断してくれるこの反応を見ると、直接灯油缶を持って買いに来る人は私以外にいないんじゃないか?と思わせる。

いつも15ℓか16ℓ買う。機械のℓ表示の回転を二人で見守り、15.0や16.0になったら蓋を閉めて一旦店の方へ戻る。会計のために

いつも領収書をお願いしていて、それもなんなら2回目から覚えてくれており(なぜなんだ、いつも青いスリッパで行くからか)、それを待っている時も間で向かい合わせになっているおじいちゃんとおばあちゃんは和やかに世間話というか近所話

いよいよお会計「1,920円です」となったところで、あらかじめ「かまいませんか」と確認しておいた1万円札を出す。はいはい、と万札を受け取った灯油人がおじいちゃんとおばあちゃんの間を抜けてお金BOXからおつりを出す。ここで何故か右奥の方から新たなおばあちゃんが出てくる。誰なんだ。
2度ほど電卓を叩いて確認の上、おつりの8,080円がやってくる。少し前あたりから、
なぜかトークおじいちゃんとおばあちゃんは話をやめ、奥さんの動きをじっと見入っている。
それからその「じっと」は私の手元に移動する。お札とともに
その「じっと見」は奥から現れたおばあちゃんも例外ではなく、
気づくと4人の人たちから私の手元と五千円札と千円札の行方は見られている。

1〜2人ならまだしも、
4人からこんなにじっと財布にお札を入れるところを見てもらったことがない。

だから私も言わずにはいられない。

「なんだか、すごく見守られてる・・・!」

一同、爆笑。

 

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2022年12月4日

進撃の風呂

ひさしぶりに、木造に住んでいます。
一応、トイレとバスは分かれているのですが、
内見のときからお風呂の古さ、
ためしにバスタブに入ってみたとき
壊れそうなくらい大きな音を出したので
そのバスタブも、お風呂も、建物も、古いことはわかっていたのですが、
住んでから、わかったことがあります。

バスタブが、浮いているのです。

なぜかバスタブと床のタイルの間にすき間があるのです。
いや、大体のバスタブは実はそういうものかもしれませんが、
少なくともすき間は見えないようになっています。


私がそのことに気づいたのは、まさに引っ越してきたその日、初日のことでした。


内見の時点でバスタブに入ってみることからもお気づきの方もいるかもしれませんが、
私は風呂に浸かるタイプです。
引っ越し初日ももちろん、
高知から猫をつれていくつかの乗り物に乗ってきたわけですから風呂はマストです。
なんとかガスや電気の契約も間に合い、湯をためて当日のうちに浸かります。
入るとき、やはり壊れるようなバリバリバリ!が響きます。油断すると立ち上がるとき、
なぜか出っ張った壁のL字部分に頭や腰をぶつけそうになります。
でもそんなのは慣れです。
"慣れ"次第で、どうとでもなります。
こわごわ鼻歌を歌いながら、湯を抜くとき、驚くことが起きました。

湯が、
一斉に湯船の底から登場したのです。
栓を抜いて排水溝および排水口に流れる湯しか知りませんでした。
その様はサントリーホールも圧巻の眺めでした。
なんのルートも敷かれていないただタイルの上に、
浴槽の穴を出た湯が「わ〜っ!」と飛び出し、
一度溜まれる限りタイルの上に留まり、ゆっくり少し窪んでいるだけの排水口に収まっていく。

一斉に出てきたのは湯だけではありませんでした。
湯のランダムなリズムに乗って、どこから現れたのか目をうたがうほどのヘドロ、ヘドロ、ヘドロ? これ何? ミジンコ? ミジンコの集合体? ヘモグロビン? 何? みたいな、とにかくどのくらいの歴代か想像できないくらいの汚れのようなものがせきを切ったように出てきたのです。


ショックでした。

こんなの、初めて見ました。
なにを、誰に、なにから伝えればいいのか、という感じでした。


しかしここは木造アパート。
それなりに年数も経っているとすればこういったアクシデント(?)も微笑んで流せる器量を! と思い、私は毎日風呂に入りました。毎日湯を流せば、いつかヘドロの歴史も一掃されるはず!という希望とともに。

 

毎日ミジンコの集合体は船の底から登場しました。
「ハ〜イ!」

  「いるよ〜!」

 「元気してるぅ〜?」
いろんな声が聞こえました。

ひと月経ち、だいぶその量も減ってきたかなと思い、
少しずつ、息を止めずに、湯栓を抜けるようになってきました。

そして湯船を使用し50日ほどが経ったころ、
湯と、いつものヘドロミジンコに乗って、ヘアクリップが出てきました。
もちろん、私のではありません。もちろん、かなり古そうなやつです。


「いつの、ヘアクリップ、、、?」

私は、「ボス」だ。と思い、静かに浴槽の中から眺めました。

 

さらにそれから10日以上経ったある日、
湯に浸かりながら、私は『進撃の巨人』を読みはじめました。
ここまで、「湯に浸かる」ということに必死で
肝心の「リラックスする」を忘れていることに気づいたのです。
引っ越しあるあるです。

Amazonを開くと、Kindle版なら「8月末まで無料で読める」と書かれていて、私は進撃しました。

湯の中で1時間、2時間、、そのまま3巻まで読み
4巻に入りこもうとしたとき、急に有料になりました。

「してやられた!」

いや、自分の見通し(期間限定・全巻無料と思った)が甘かっただけなのですが、まさか3巻分とは。

ひとまずその巻だけ購入し、途中まで読み、
夜もいよいよ遅かったので一旦湯船から出ることにしました。

3巻と少し、いやがおうにも今後の展開が壮大であると予感させる物語、その基盤となるだろう序盤を一気にかけぬけ、私はボー然としながら湯栓を抜きました。

いままでで一番、最大サイズのヘドロみたいなやつが出てきました。

私の目にはこのようにしか見えませんでした。

 

 

 



巨人です。

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2022年11月27日

漫画の感想


「いいよ、話しても。」

マヤちゃんが上目線でものを言うことはよくあること……ではなかった。多分。
私が今、何を話してもよいと言われているかというと最近3日3晩にわたり夜は朝方まで、
日中は時間の許す限り読みつづけた漫画『進撃の巨人』についてだった。

「え・・・」

私は急に場末のスナックに来たような錯覚を覚えて戸惑った。

「いいよ、話しても。」

何を話していいと言われているかも正直よくわからなかった。

「感想。何か読んだり見たりしたらさ、話したくならない? 人に。」

そう言われてみたら私はただ母親に「読んでる!」とか「最高!」とか「すごい!」とか電話で
ただ漠然とした思いを発露させるだけで、それはたしかに誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。

「いいの?」

私は私で昭和のしめっぽい返しになってしまったものの
胸の内はとにかく「面白い!」の一言に尽きている。

あと、ひとつ気になることがある。
マヤちゃんは、進撃の巨人を、途中まで見ている。(アニメ)

「どこまで見たの?」

聞くとけっこう見ていた。
漫画でいうと6巻あたりまで見ていた。
今抱く感想はひとつだ。

「よくやめられたね!」

正直、展開にのみこまれてしまえば、たしか20巻くらいあたりまでやめるタイミングが見つからない。

そう言うと、マヤちゃんが

「たしかに、私、途中で抜けたもの、結構あるかも・・・」

なんと、鬼滅もだった。ゴールデンカムイも、呪術廻戦も、
途中で「なんとなく」見るのをやめたらしい。

「あ!あれは全部見たよ!『鋼の錬金術師』」

私は鋼の錬金術師を見ていない。

「えー、進撃の巨人、面白いのにな。色んなことが書かれていて……
 とにかくよく途中でやめれたね!」

ということばかり言っていたら、

「そんなに面白いなら、進撃の巨人、もう1回見てみようかな。」とマヤちゃんは言った。

そしてマヤちゃんは言った。

「話さないで。」

こうして私は読み終えた漫画の感動を、
伝える機会をみずからひとつ失った。

 

立川のレストランにて 2022年8月
(これからアニメ映画を見に行く)

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2022年11月15日

能を見に行ったときの6コマ漫画

いつぞや、マヤちゃんと見に行った能は、

「合同研究発表会」的な副題がついていて、

これまで見たことのある能とちがって若い青年も多く出演していた。

その帰り、なんとなく新宿の喫茶店でお茶をした。




















自分がいつか書いた 6コマ漫画 を思い出した。

 

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2022年11月6日

マヤちゃんから聞いたおもしろい話

マヤちゃんの働いている職場に、
ときどきヘルプで別の支店からの人員がやってくるそうだ。

その人がやってきたのは2〜3回目。

終業時間だったか、ふとしたタイミングで、
二人はお手洗いの洗面台で鉢合わせたという。

 

【 登場人物 】

(さらに…)

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2022年10月30日

ある日の日記


ひさしぶりに歯医者へ。口の中ってつくづくプライベートな空間だな〜と思


(さらに…)

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2022年10月23日

飛んで火に入るIKEA日記

↓  ある日のメモ  ↓
= = = = = = = = = = = =


まさか七月、二度目の立川。 

 

前回は仕事で疲れていたし、

 

この休日でなんとか行かねばという気持ちがあったし、なんとなく東京に来たばかりで一人の心細さも相まってとにかく寂しかった印象。

 

しかし今日は心も晴れ。

 

無職だしもうこれはIKEAに行くっきゃない。

 

そんな感じで立川へ向かう。
= = = = = = = = = = = =




=== IKEA – take1 ===

 
土日以外、平日に1日ある休みを利用して行った。

だからなのかなんとなく景色が暗かった。
曇りという天気のせいだけではないと思う。

しかも以前東京に暮らしていたときに一度だけ来たはずのIKEAは
なんとなく前よりくたびれていて、地元の人の姿も多くなっていた。
つまり、憩いの場と化していた。

せっかくIKEAに来たのに感じられなかったIKEA感。

加えて私は故郷を恋しく思い、ここに高校時代の友人ときたら楽しいだろうなと想像した。

 

 





=== IKEA – take2 ===
2回目のIKEAは無職だった。

 

天気も晴れていた。

 

気持ちも前より晴れていた。

 

だから最寄りの駅について、改札前にあったビルに入り、

雑貨を買ったり、

スターバックスのふだんは飲まないアイスコーヒーを買ったりした!

 

今日は、前回の悲しみIKEAで目星をつけた商品があり、

それをふたつ買うために、

事前に選びに選んだキャリーを購入し、持参している。

 

だからIKEAに着く前に、雑貨屋に寄り、コップなどを買ったというわけだ。

 

道中、買ってきたバインミーとアイスコーヒーでベンチ。

 


しかし座ってすぐ、

まさか、スターバックスの、アイスコーヒーを、野原の上に、こぼしてしまう。
いや、こぼしたじゃなく、落としたのでもうドバドバ。
土に還元してしまう。





 

 

 

 



 

 

 

想像だけ、している。

 

 

 

ここまでの道中、

 

ケチケチ飲んでた自分が悔やまれる。

 

 

 

アイスコーヒー一口の単価があがった。

 

 

そしてIKEA。

 

今回はウロウロせず目的の物の場所へ。

それでも色で迷ったりしてけっこう時間がかかってしまったが、

買う。

 





・・・・・・。


ここに載せるだけでも重かった。


なんとかレジはこのまま通せたものの、これを、マイ・キャリーに移しかえて、家まで持って帰らねばならない。

載せるだけでも大変だったことを思うと、近くにいた店員女性に声をかけ、
持参のキャリーにくくりつけるのを手伝ってもらえないか聞くことに。

 

すると母親くらいの年齢の女性店員はテキパキと

「わたくしですと、共倒れになってしまいます!
 あそこに見える、レジの男性に聞いてみてください!」

と言って風のように去った。
店員の口から「共倒れ」、初めて聞く。

そして若い男性店員に手伝ってもらう。

「これ以上はできません」

と言って男性店員も去る。





・・・・?








・・・・・・?





たぶん今から自分のことしか考えられなくなるだろう。

私の目的はこれを買って、家に持ち帰ることなんだから歩き出す。
歩き出したら案外なんとかなるはずだ。



何かどこか見間違いがあるかもしれないと思って、
一度外でもチェック。



・・・え、墓・・・?


==== fin ====


自分の影を見ても引く。 

なにかの寓話にありそう。

 

 

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2022年9月11日

急に能 日記

「あれ、どうしてわたし、今ここにいるんだろう?」
お互いがそんなことを思っていた気がする国立能楽堂。
事の発端はおととい見に行ったレイトショー。映画は能楽をあつかったもので見終わったあとコーヒーを飲みながら「あー、なんか、能見たくなっちゃった。」とマヤちゃんは言って、わたしは(そうか、マヤちゃんは能が見たくなったのか。)と思って、マヤちゃんはその後も能見たい発言を2回はして、わたしはマヤちゃんすっごく能見たくなっちゃったんだなと思って翌日、私は私で、9月から働くことになり、決まったら決まったでああこれでしばし無職の日々ともおさらばと思うと8月残り2日の無職の日が大変に貴重(勝手)、マヤちゃんは明日も休み、私は明日の能のスケジュールを調べていた。その日のうちにメールで↑一応明日の能スケジュール↑と書いてめぼしい能のリンクを送った。マヤちゃんからの返事は行くとも行かないともどちらでもないやつで、私はちょうどよいと思ってそのまま寝た。11時間寝た。起きたら12時だった。ああこんな無職の日々ともおさらば…。お腹がすいていた。まずはマヤちゃんにメールした。「能、行く?」マヤちゃんからは「今すぐ動き出せないことを考えるとまた今度にしよっかな」と返ってきた。その時家でセサミを見てたらしい。「オッケー」と返して支度していると、「ランチの店、いいね」と返ってきていた。「能、行く?」と合わせてこれから行こうとしているランチの店の名も送っておいた。一応「いく?」と返すと「いこっかなー」と返ってきた。意外。しかも「最速10分で出るとして…」と返ってきた。意外。速い。なんなら今までマヤちゃんと知り合ってから一番速い。

 

そうしてマヤちゃんはやって来た。お昼を食べにやって来た。お店は人気で、ランチのピーク時間を過ぎたというのにまだ人が一人待っていた。その後につづいて並んでる時間に聞いてみた。「ランチ食べたら、能どう?」マヤちゃんはもう催しが始まっていることを気にしていたので、その場で電話して、途中からでも入れるか、最後の演目が何時からか聞いてみると途中からでも入れて、席も満席じゃなくて、最後の演目は15:19〜とのことだった。店を1時間前に出れば間に合う。マヤちゃんはとにかく「定食を食べに行く(能の観劇の含まれない)」つもりの身なりでしかないことを気にしつつ、「いいよ。」と言った。そして急きょマヤちゃんは演目「田村」についてのストーリーを調べ、読み上げてくれるストーリーを私は聞いた。そうしてマヤちゃんはチキン南蛮を食べ、私は鶏と茄子のおろし煮を食べ、ほぼ次の瞬間にはここにいた。

「私、ほんとに定食を食べに行くつもりの格好なんだけど…」、

 

その部分について不服そうなマヤちゃんを「素敵だよ!十分!」となだめながら、外は雨の中、私たちは能を堪能した。

2022年8月

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2022年9月5日

HA RI YA MA – マヤちゃんからの感想メール

クリックしてよんでね!

↓↓↓


※   腕に巻く針山は誰にとっても便利らしい

Instagram本文に載せた、HPではカットした部分。
同じくfacebookに載せた、カットしたまた別の文末部分がこちら。

↓↓↓

かたやマヤちゃんからすると、
「裁縫する のに 針山をつくらない」
というのが腑に落ちないらしかった。



それがこの感想ですべて解決。


マヤちゃんから出てくる感想や考えは、
私からは出ないもので、
だからいつもおもしろいしよく会う。


ところで今回、イラストに文字をのせてみたのは、
「ファンシーな感じにしたくてさ!」
するとマヤちゃんは、
「ファンシー・・・かな?」
それについては多分どう説明してもむずかしそう。

 

 

 

 






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2022年8月28日

HA RI YA MA 2



 

 

 

「いや、あの・・・・・」しどろもどろで説明するとつまり、心の底から針山がほしいけれどもそれは本当に必要だからというだけで、その針山自体に自分なりの創意・手作りは求めない。裁縫はするし嫌いではないけれども、最近ミシンをかけたものといえばカーテン、プリーツの入ったものをほどいてのばしてカーテンテープ(←とても便利)をつけて新しい家の窓に合うサイズにした。手縫いしたものといえばカバンとズボン。どちらもほつれを直した。つまり、ファンシー要素はない。あくまで、実用。現実に必要なものを、ミシンや針や糸をつかってつくる・整える。そして針山を手作りしようという気が、起きない。日常生活でもキャラクターものの登場は僅少だし、どちらかというとシンプルで機能的なものが好きだ。スタイリッシュさは大切。大学時代、女子達が「かわいい〜〜〜!!!!」と言って20名ぐらいが群がった筆箱には興味が皆無だった。


「私の身の周りで、2,000円の針山を買ったのは寛子ちゃんくらいだよ。」

私はそれを名誉ととり、針山を買った。

 

 

 

 

 

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