2016年11月8日
EYEコンプレックス(成人編)
==(前回・幼少期編)==
ナースの友人がさわがしい。
「師長さんが、アイプチをしてきた!!!!」と言っている。
職場の人には言えなかったために私に連絡をしてきたらしい。
「わたし、夜勤明けやったがやけど、師長さん日勤やって、入れ替わりで会ってよ、そしたら! アイプチしちょったがってえ! 昨日までしてなかったのにで!? しかも怒っちょってよ! まあ業務上の、私には関係ないことやけど、そんなことより、わたし『え! 目!』と思ってえ! しかも他にも二人はべらかして話しよったがやけど、その人らあは気づいてなさそうやったしい!」
彼女曰く、その師長さんは"重度のひとえ"らしい。
それが二重になってきたら、
「さすがに気づくろ。」
そう言うと、彼女は、
「二重の人は人の目をそんなに気にしてないがってえ!」と豪語した。
そんなことを議論していたらさらに不毛な会話が増えそうだったので、渋々スルー。
それよりなにより、私にはわからなかった。
「そりゃ少しは驚くろうけど、驚きすぎじゃない? なんで?」
「!!!!!!!!!!」
ナースの彼女は「とし。」と言って、
「20代の子がやるなら分かるけど50歳の人が、
一体どういうきっかけで、どういう動機で、アイプチをするのか、
しかもそれを職場にしてくるなんて、気になるやん!」と言った。
それでも盛り上がらない私を「人選ミス。」と非難し、最終的に彼女は「わたしは、職場の誰よりも、師長さんの気持ちがわかる!!」
と叫んだ。
よっちゃんは一重であるがゆえに師長さんの気持ちがわかり、私もほぼ一重であるがゆえによっちゃんの気持ちがわかる。
「うらやましいがやろ。」
よっちゃんは今までも、今も二重になりたいと思っているのだ。
だけど人前でアイプチをすることに勇気がもてず、
夜、家の中だけでアイプチ(彼女曰く"コソ練")をしていた時期もあったが、
瞼にシワができそう、という理由でやめ、
でも今も憧れているのだ。その二重に、堂々と糊の力で近づいた師長さんを見て人並み以上に驚いたのだと思う。そんな彼女を少しでもなだめるべく、
「でもほら、今は昔より、アイプチはメイク感覚で認識されちゅうやん。」と声をかけた。そうだ、
私たちが高校生のころ、アイプチで二重に成り上がった一重には、どちらかというと「裏口入学/不正」みたいな雰囲気があった。
そう言うと初めてよっちゃんは落ち着いて、
「そうやね、確かに今はアイプチがメイクっていう認識が広まったね。」
と同じことを言った。
そしてよっちゃんは私が奥二重であることを今も認めてくれない。