2016年8月25日
細Pのこと
細ピーについてわたしが知っていることと言えば、
「火星人」というあだ名で呼ばれていたこと、
髪がいつも5cmくらいのショートカットだったこと、
B’zの大ファンで、「ウルトラソ〜ウル!♩」と歌うと
100%「ハァイ!」と言って大ジャンプを決めてくれること、
その「ハァイ!」と言ったとき、
上の制服の丈がなぜか異様に短くて
シャツも着ていないから100%お腹の部分が見えていたこと、
授業中、半目だったり、
白目のまま笑うなど、
居眠りの仕方にバリエーションがあったこと、
などで、楽しい中高時代の友人だった。
その細P、高校を卒業して、みるみると「女性」になった。
きれい、きゃしゃ、かわいい、美人などの要素をはらんだ「女性」に。
美人だった友だちは高校にもたくさんいたけれど、
女性への成長を遂げたNo.1はわたしの中で間違いなく細Pだ。
わたしは少しだけ、淋しかった。
数年ぶりに友人の結婚式で会った彼女は、
ほどよい茶色のロングヘアーをふわふわにまとめて、
あわい色のワンピースドレスにハイヒール。
このさびしさはマケオシミ的なものではなく、
ただもう細Pがお腹の見えない服を着ていることが、
肩をすくめて発作みたいに手を叩きながら笑う姿を見れないことが、
少しだけ、淋しかったのだ。
ときは流れ、そこからさらに数年が経ち、
細Pが「ボクササイズ」に通っているという噂を聞いた。
ボクササイズ、
それはボクシングの手法を利用した、気軽にできる一種のエクササイズ。
あんなに完成された女性に見えるのに、
細Pはシェイプアップしたかったらしい。
細Pから話を聞いた、友人Sが言った。
「でもね、打ち返してきたがやって。」
なんでも、
周りの女性たちが簡単なパンチだけのボクササイズを終え満足し帰宅していく中、
細Pも軽いステップを踏みながら軽いパンチでトレーナー相手にボクササイズしていると、
彼女の軽いパンチを受けた後、
ミットをつけた相手トレーナーが、まさか腕を振りかぶって、本気で打ち返してきたのだという。
これはボクササイズではない。
ボクシングである。
とっさによけた細Pも戸惑っただろう。
ボクササイズに来ているだけなのに打ち返されたら。
そうだ、しっかりと覚えている。
中高時代、彼女は陸上部で砲丸投げの選手だった。
おそらくトレーナーの人は、細Pの素質を見抜いたのだ。
しまいには、試合に出ることまですすめられ、
全く気軽なダイエットどころではなくなった細Pはボクササイズ通いをやめたという。
他人のトレーナーでも見てとれるくらい、
彼女の本質はまだそこに生きている。
なんだ、女性らしさが加わって、グレードアップしただけか。
先日のこと、
ひさしぶりに細Pと会った。
今や結婚し、一児の母でもある彼女と夢中で話しているうち、
わたしはだんだん前のめりになり、
なにかを説明しようとして手がCの形になっていたらしい。
「もまれんで〜?」
と、言われた。(*もんじゃだめよ、という意味)
細Pだった。
それから彼女は
「自分の子どもを、ひろじ(わたしの中高時代のあだ名)みたいになるように育てる。」
と、言ってくれた。
こんな褒め言葉ってあるだろうか。
そんなこんなで、さびしさなんて今はもうないという話。
(わたしはちゃんとシャツを着ている。)