2015年10月15日

幻の豚

昨日、スーパーで買ってきた沖縄の豚をしゃぶしゃぶにして食べた。

とても美味しかった。

それで、初めてのバイトのことを思い出した。

今になって言うのはなんとなく恥ずかしいが、
上京して初めてしたバイトは麻布十番の居酒屋だった。

(憧れの塊だった。)

その店は、1階がカウンターのみで2階がテーブル6席ほどの程よい大きさの、
芸能人なんかも時折訪れるような、それなりに値のはる雰囲気もある店だった。

店が提供する料理の中には、
「メイシャントン(梅山豚)」という豚を使ったものがあった。

メニュー名にも豚の名称がそのまま使われていたものだから、
私はバイト早々、お客さんから
「この、メイシャントンっていうのは何ですか?」
と聞かれ、あわてて厨房に聞きに行くことになった。

「市場にもなかなか出回らない貴重な中国の豚だよ。」
と社員の人から説明を受け、
そのままをお客さんに伝えてから裏に戻ると、
メイシャントンに関するまた別の情報を教えてもらった。

私はむしろ最初の説明より、後付けの説明の方に好感をもち、
以後お客さんから同じ質問を受けたときには、そちらの方を伝えることにした。

客「 この、メイシャントンっていうのは何ですか? 」

「 西遊記に出てくる豚です。」

「 ……。」

私は現場の空気が一瞬止まるのも全く気にならなかった。
だって、貴重なブタさんだもの!

だけど今なら分かる。

誰が、西遊記に出てくる豚と聞いて食欲をそそられるだろうか。

誰が、西遊記を見ながらキャラクターの味を想像しているというのか。

「それ、食べたかったんです!」と言われても私自身たじろいでいたと思う。

たぶん何かしらのロマンを感じていたのだ。

その答えだけに。

こんな東京の一角で、西遊記と出会えることに。