2022年11月27日
漫画の感想
「いいよ、話しても。」
マヤちゃんが上目線でものを言うことはよくあること……ではなかった。多分。
私が今、何を話してもよいと言われているかというと最近3日3晩にわたり夜は朝方まで、
日中は時間の許す限り読みつづけた漫画『進撃の巨人』についてだった。
「え・・・」
私は急に場末のスナックに来たような錯覚を覚えて戸惑った。
「いいよ、話しても。」
何を話していいと言われているかも正直よくわからなかった。
「感想。何か読んだり見たりしたらさ、話したくならない? 人に。」
そう言われてみたら私はただ母親に「読んでる!」とか「最高!」とか「すごい!」とか電話で
ただ漠然とした思いを発露させるだけで、それはたしかに誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。
「いいの?」
私は私で昭和のしめっぽい返しになってしまったものの
胸の内はとにかく「面白い!」の一言に尽きている。
あと、ひとつ気になることがある。
マヤちゃんは、進撃の巨人を、途中まで見ている。(アニメ)
「どこまで見たの?」
聞くとけっこう見ていた。
漫画でいうと6巻あたりまで見ていた。
今抱く感想はひとつだ。
「よくやめられたね!」
正直、展開にのみこまれてしまえば、たしか20巻くらいあたりまでやめるタイミングが見つからない。
そう言うと、マヤちゃんが
「たしかに、私、途中で抜けたもの、結構あるかも・・・」
なんと、鬼滅もだった。ゴールデンカムイも、呪術廻戦も、
途中で「なんとなく」見るのをやめたらしい。
「あ!あれは全部見たよ!『鋼の錬金術師』」
私は鋼の錬金術師を見ていない。
「えー、進撃の巨人、面白いのにな。色んなことが書かれていて……
とにかくよく途中でやめれたね!」
ということばかり言っていたら、
「そんなに面白いなら、進撃の巨人、もう1回見てみようかな。」とマヤちゃんは言った。
そしてマヤちゃんは言った。
「話さないで。」
こうして私は読み終えた漫画の感動を、
伝える機会をみずからひとつ失った。
立川のレストランにて 2022年8月
(これからアニメ映画を見に行く)