2022年8月7日

寿司のネタ

「いつも寿司の話をしてしまう。」

と五影が言う。

「どうして?」と聞くと、

「寿司が好きだから。」

「寿司ってすごいやんか。"寿(ことぶき)"を、"司(つかさどる)"って書くんやで。」

頼まずとも、話し出してくれる。まだ話してくれる。

「あるいは、魚に、うまいって書くんやで。」

「え?」

あまり意識していないことを急に言われると分からなくなる。
静かにスマホに打ちこむと、本当だ"鮨"。

「あとな、ちゃんとした寿司屋に入るとするやんか。
 そこで、もし、もしやで、ひと皿しか食べられませんってなったら、
 意外とな、そのひと皿に選ぶネタ、一番好きな寿司のネタじゃなかったりすんねん。」

「え、私、同じかも。」

「えええええ! ほんま!? 何!?」

「エンガワ。」

「そうか〜! エンガワか〜!」

ちなみに五影は一番好きな寿司のネタは
多少苦しそうに(ひとつに選ぶのがしんどい)「赤貝。」と言いつつ、
ひと皿と言われたら「赤身やねん。」と言っていた。
「それってマグロ?」と聞く私に絶望しない五影はやさしい。

そうして昨日無職になった、と報告すると五影は間髪入れず
「最高やんか〜!」と言った。



( 理由:選び放題 )