2018年9月19日
今日の雨のこと
一緒にいた全員が、全力で濡れていた。
大量の雨が降った。一気に。
わたしたちは全員、折りたたみ傘しか持っていなくて、
その大きさはその雨量に対してほぼ"無"に近かった。
Kさんが道案内を間違えた隙に雨はさらに激しくなり、
これは冗談にならないという思いが全員に芽生え始めてマンションの軒先に休息を求めたとき目的地の灯りが見えた。「ここで休んでどうする」ふたたび雨のなかを進み、店に着くと完全にもう客が来ないと踏んで座っておしゃべりを楽しんでいた二人がびしょぬれの4人を見て言葉を失っていた。びしょぬれの4人のうち3人が何かを買い、その間に落ち着くだろうと思っていた雨はさらに勢力を増した。視界が水といってもいいほど降りしきる雨のなかへ、わたしたちはふたたび覚悟を決め、息を止めて飛び込んだ。
「×💀☆◎?※#💲%*〜〜!!!!!!」
「せ0α*🍞&B☆??!!!!」
「@:>こ🐮0※🌾〜〜〜!!!!」
つねにだれかが、あるいは全員がなにかを叫んでいたが、どの言葉も雨の音に消された。
「店を出て、右に曲がってまっすぐ歩くと右手に駅がある」
Kさんが店の人から聞いてきた情報を頼りに、わたしたちは土砂降りのなかを叫びながら無力の傘とともに歩いた。1cm進むごとに、背中が、頭が、足が、雨に打たれた。そうして今度は寒さが耐えられなくなったとき現れた大きな軒のしたに、全員が何も言わずに入った。
「ここに駅があるわけはない、なぜなら私たちは左側からきた」
行き道も間違えたKさんの、疑惑が核心に変わっていた。
ある者は髪を、ある者はスカートの裾を、ある者は靴下を絞った。
どこからでも水が出た。寒かった。
5分もしないうちに雨は落ち着き、
じぶんたちは何をやってきたのかと誰もが声に出さずに思った。
わたしたちは元来た道を戻り始めた。
さきほど駅から出てきたたばかりの乾いた服をきた人たちが、わたしたちを2度見した。
そうしていつもは不快に思うはずの、ぬるい風の吹く地下鉄の入り口に立ち、 誰かが「あったかい。」と言った。
その言葉は全員の腑に落ちた。
それでもあの一瞬のような、
30代〜40代の4人で叫んだ雨のなかは、とても自由だった。
明日からもがんばろう。