2018年4月29日
わたしを表すもの
大学卒業間近に、就活もロクにしていなかった私が
知り合いの紹介でバイトに入ったのはとある編集プロダクションだった。
勤務初日、
60歳の女ボス・三宅さんは
「あなたを表現するものを何か1つ提出して。」
と言った。
加えて「なんでもいい。」とも。
「音楽をやってる男の子は自分の曲の入ったカセットテープを持ってきたわよ。」
そこで働き始めて、全てのことが見事に初めてで、
怒られるわボス気分屋だわ、
例のものの提出については一度も触れられなかったので、
このまま流せるんじゃないかしめしめ、と思っていた矢先、
「ちょっと、1つ提出してって言ったでしょ!まだ!?」
と怒られた。
近日中の期限をつきつけられ、
私はほぼ徹夜で自分のことが分かるものを制作することになった。
私を表現するもの……。
一体なんだろう。
自分で作った曲もあったがそれが自分を表すとは到底思えなかった。
わたしを表す、もの。
そうだ。
私は、私の年表をつくった。
私を表現するもの、私を少しでも相手に伝えることができるもの。
それは他ならない、私の歴史である。と考えたからだ。
バイトの終わった後、
夜の3:00頃まで必死で自分の年表を生まれて初めて作った。
明日もバイトである。あまり無理をして明日の仕事に差し障るのは良くないな、と思い、
生まれて初めてのマイ年表は小学校6年までのものとされた。
大事なことは大抵小6までにつまっているのだ。
翌日。
私は細長い年表をまるめて、
初日に面接をしたキッチンで、
丸椅子に座ったボスに差し出した。
「なにこれ?」
と聞かれ、
「私の年表です。」
と答えると、激しく怒られた。
なんでカセットテープはよくて年表はだめなんだ。
OLもやってみたが、
未だにわからない。