2014年12月1日
私的インタビュー 【 ホホホ座 】
山下さん(以下、山):なんか、話を、するんですか。
浜口(以下、浜):なんか、合間があれば、聞きたいなと思って。
山:ああ、そ!なんか、なんすか、なんでも。
浜:昨日と髪型が違いますね。
山:そう?
浜:はい。
山:昨日は、お風呂、朝入らへんかったから。
浜:あ、そうながや、そっちの方が整うがや。
山:え!ストンとなってる? ワサワサ?
浜:昨日はフワッとしてて、今日はピヨッとしてます。
山:ピヨッとしてますか・・・ちょっと時間なかったんで・・・ブロウがね。
浜:恐れ入ります。そんな日に・・・ 。
山:いえいえ。
*****************
こんな調子で始まったインタビューは、
京都に旅行中、大好きな本屋さんで見かけた本がきっかけだった。
「わたしがカフェをはじめた日。」
絵本を思わせるような固く大きな表紙に、味のあるイラスト。
店頭で貼り紙と共に置かれていたその本は、
まさにその店「ガケ書房」の店主、山下賢二さんをはじめとする
新ユニット「ホホホ座」によって制作されたものだった。
――「ホホホ座」とは!?
浜:なんか、すごい面白そうやなと思って。
山:何が?
浜:ホホホ。
山:ホホホね。
浜:ホホホ。あ、ホホホって略したら失礼か。ホホホ社?
山:座、座。ホホホ座ね!
(一同、笑)
山:なんにも分かってへん。
(一同、笑)
山:ボンヤリしすぎや。
浜:ホホホが、ホホホがインパクトあって。
山:ああ、はい。ホホホ。
――ホホホ座とその構成員たち
浜:いつ結成されたんですか?
山:3年前。
浜:飲み屋で? 京都の?(本の付録「往復便多」*に記載)
山:そうそうそう。
浜:そこにホホホ座になる人が皆いたんですか?
山:そうなんです。絵を描いた人はいなかったですけど、
男3人は皆呑んでて、いました。
浜:あ、絵を描いた人だけが、あの、紅一点*なんですよね。
山:紅一点。
浜:すごいですね。
山:いいえ。
浜:(本に)載ってるイラストも全部その方が描いたんですか?
山:そうそうそう。
浜:元々絵を描く方なんですか?
山:どっちやろ。元々デザイナーやと思うねんけど、
浜:絵も描けるんだ。
山:絵も描けるんだ。
浜:その人はどうやって(ホホホ座に)入ることになったんですか?
山:その人は、その、もう一人の人が信頼してて。
浜:マツモトさん*?
山:そうそうそう、松本さん。一応「コトバヨネット*」所属でもあったので、彼女は。
どうだろう、ということで。まぁ僕も元々知っててんけど。お願いしようかということで。
――ホホホ座のはじまりと、きっかけ
浜:3年前やろうぜってなって、それで、カフェを、特集しようと思ったんですか? 同時に?
山:んー、元々ね、僕が単独で、あるカフェの店長さんに頼まれて。
その2階のギャラリーで展示をしてほしいって。
でも展示するもんないから、カフェで何かするんやったら
じゃあカフェに関する本、なんか売ったらええか、と思って。
本を作って、その作る過程を展示して、できたやつも販売したらええんちゃうかと。
浜:展示を頼まれて、で、やったんですか?
山:いやいや。実際に展示はしなかった*。
やるために、本を作ろうかなと思って、
それで松本さんに、こんなんしようと思うてんねや〜って言うたら、
それやりたい、って言って。ほんで一緒にやろか、ってなって。
浜:松本さんも、やりたいって?
山:そう。ぽろっと話をしたら、興味が会ったらしくて。喫茶店、カフェ。
浜:喫茶店に興味があった?
山:とか、カフェの、女性の生き様とか。
浜:喫茶店の女性の生き様に興味があった。
山:うん。ほれで、じゃあ一緒にやろうか、
一緒に作ろうかって感じにちょっとずつ固まって行って、足場が。
あぁ、そうや!ホホホ座やこれは!ってことになって。
その時点で2年前くらいやってんけど(笑)。
「ホホホ座でまとめあげたらええんや、この企画」。
浜:たしかに。今聞いても、ほんまや、と思います。
山:ちょっとずつ、高めていって、それでメンバーも…
浜:その時に女性も入ってきたんですか? 元々の3人に。
山:そうそうそうそうそう。
――ホホホ座の「あいづち」担当者!?
浜:奥付に書かれてる構成員の中に、
「あいづち」担当ってありますけど、何なんですか? あの…(笑)
山:(笑) 彼は・・・
浜:一緒に(インタビューに)ついて来てたってことですか?
山:加地君*っていうんやけど、「100000t」ていう店をやってて、
加地君は、3年前に結成したメンバーの時いてんけど、
本を作っている最中は全く教えへんかった。何をしているかとか。
出来上ってから、出来たで、って(笑)。
基本、彼は「あ〜、ええんちゃう?」とか、あまり物事を否定しないタイプ。
浜:素晴らしい人や。
山:肯定してくれるタイプやから、“相づち役”。
「ええんちゃう?」「それええやん。」「お〜。」とかって(笑)、
「めちゃくちゃええやん。」とか、相づち役やん。
浜:私、てっきり取材に行って、横で、
山:あ、違う違う違う。
浜:自分たちの相づちなんだ…!
山:そうそう。
浜:「あ〜なるほど〜」って言う人かと思ったら、
山:自分たちに対しての。相づち。
浜:え、じゃあ、ホホホ座結成の時、メンバーとして一緒には呑んでたけど、
何をしてるかは知らされないまま、できた時に、、
山:そうそうそう。出来た時に、こんなん出来たよ〜、
浜:じゃあ喜ばれたでしょう!
山:喜ばれた(笑)。「めちゃすごいやーん!」とか言うて。
浜:その時も相づち。
山:相づち。ええやろ〜、とか言うたら「ええやん!」。相づち。
浜:いい人や。
山:相づち。
浜:その人、本当に相づち担当なんですね。
山:相づち担当。彼がいて初めてGOサインが。
浜:できたんだ。
山:心の中のGOサインが。
浜:あ〜、いい人や〜、必要や〜。
山:必要必要(笑)。後押ししてくれる。
――ホホホ座という名前の由来
浜:まず名前(ホホホ座)が面白いなっと思って。
山:ありがとうございます。
浜:どうやって決めたんですか? 飲み屋で?
山:飲み屋で。◯◯座っていうのがいいなって思って。スカラ座、みたいなさ。
浜:なるほど。
山:カタカナ使いたかったから。
“ホホホ”ってシンメトリーなんです、縦も横も。1本線で全部繋がんの。
浜:ほんとだ!
山:それもいいなと思って。
浜:なんか理由がめっちゃかっこいいですね。
山:そう?(笑) 理由っぽかったかなぁ?
浜:シンメトリー、みたいな言葉が出てくると思ってなかったです。
山:あ、そうそうそう。それたまたまやけど。
浜:見た目とかも考えて? 笑い声とかじゃないんですか?
山:あー、じゃあ・・・それで。
浜:(笑)
山:でもまぁ、「ホ」っていうのはね、ちょっと脱力の、「ホ」って発音やんね?
浜:はい。
山:「ガ」!とかよりね。「ガ」!とかもう、なんかもう。ホ。ホっとしたいやん。
浜:じゃあ、今、したいことって何なんですか?
サポート的なことなんですか? 何かを広めたりってこと?
山:僕がしたいのは、ホホホ座で・・・。
あれ、「作品」です。1st Album、ホホホ座の。完全に。
浜:カッコいい!
山:ほんとにほんとに。世にいうバンドやから、次は2nd Albumを・・・
浜:計画? もう進行中ですか?
山:うーん。ボンヤリ。
浜:1st Album、ジャンルで言うとどんな感じですか? POP? ROCK?
山:ロックでしょ。
浜:あああ(興奮)満足です!
山:ロックの名盤でしょ、あれ。
浜:調子に乗ってますよ。名盤だと思いますよ。
山:どっちや。
―― 中略が入ります。
浜:「ガケ書房」って、できてから何年目になるんですか?
山:10年。
浜:そうなんですか、長い!
山:大変、もう。
浜:えらい!
山:いやいや、もう。心が折れそうです。
浜:(笑)10年? すごいですね〜・・・ガケ10年・・・
それまで何してたっておっしゃってましたっけ? 京都に?
山:いやいや。東京で編集者をして、印刷屋さんで働いて、古本屋さんで働いて・・・
(ここから数十分、山下さんの歴史に聞き入る浜口)
(数十分後)
浜:・・・いかん! ホホホ座さんについて全然聞けてない!
山:いやいや、ホホホ座はね、これからなんでね。
あれが全てですよ。今のとこは。
浜:そっか。
山:うん。今のとこあれが全て。
―― 本ができるまで
浜:どれくらいの期間かけて(本は)出来上ったんですか?
山:これねー、大分のんびりしたねぇー。
取材したんは2年ぐらい前からやってて、インタビューの文字起こしってあるでしょ?
それを僕がやんねんけど、ずーっとサボってて。
浜:よく掘り起こせましたね、記憶。なんか、録音で?
山:録音、してたね。録音してた。
浜:それを聞いて、
山:そう、聞いて。ゆっくりゆっくりやってって。
多分、すぐやったら半年ぐらいでできたんやけど、2年かかりました。それがあったから。
浜:大作。
山:とろとろとろとろ。煮込んだんです。
浜:書ける時まで待って。
山:そうそうそう。
浜:2年前ってことは、2012年。
山:うん。
浜:インタビューってしたことあったんですか?
山:ありました。
浜:あるんだ!
山:僕、あの、ガケ書房のサイトを掘ってったらある、
「タブーインタブー*」ってコーナーがあるんですけど、
浜:たぶーいんたぶー?
山:タブーの中のタブーって意味と、
タブーのインタブー……インタビューっていう2つの意味があるんです。
浜:タブーの中の……うん。うん。うん。
山:要は、町歩いてて、もしくは知り合いの人で、
「この人、ミュージシャンって言うてるけどほんまは何で飯食うてるんやろ?」、
「この人、子供の時どんな感じやってんやろ?」、
「この人の一番の武勇伝ってどんなんやろ?」っていうのを、
まとめて出すっていう、インタビュー記事。
浜:わかる! すごい興味あるのわかります!
山:わかる?
浜:結構同じような動機ですもん、多分。
山:ああ。
浜:多分それだけ、な気がする。それを聞いたんですか。気になる人に。
山:はい。で、まとめてます。
浜:で、それを(HPに)あげてる。
山:あげてます。おもしろいっすよ。
浜:おもしろそう。
山:結構強烈な。
―― ホホホ座のメッセージ
浜:だからそれに近いものは感じますもんね、質問内容とか。すっごいリアルじゃないですか。
なんていうか、“喫茶店ってこういうもの”みたいなところからは発してないなって感じがします。
違う? リアルに感じる?
山:うん。まぁ、そう。そうそう。
浜:やっぱり、女性、その店主への興味があるのかしら。
山:最終的に、あの本は誰に届けたいかっていうと、あのー、メディアに届けたいんですよ。
浜:メディア?
山:メディア。作ってる人たちにあれを届けたい。
浜:本とか? TVとか? 全部?
山:そうです。「そろそろ、もう、次の、提案、しましょうか?」みたいな。
要は、ああいう“扱い方”って大分もう決まってきたでしょ?
浜:確かに。
山:理想の私、みたいな。
浜:はい。
山:じゃなくって、その“私”の元にある物語を、もっと前に出したりとか。
すかすかの白っぽい世界だけ紹介するのも、僕たちは嫌やなと思って。
浜:ほんとですね。
山:そしてあれになりました。
浜:(拍手)
山:ありがとうございます。なんか、恥ずかしい。言うた自分が恥ずかしい。
浜:全然。いや、すごい。ほんまやなぁと思って。
じゃあ何を伝えたいとかっていうのも、今のところにつながってくるんですか?
山:そうですね。だから、大きく言っちゃうと、、
浜:言っちゃって下さい!!
山:男の復権、とかですね。
浜:はい?
山:(笑)何言うてんねやろ。
浜:(笑)いやいや。
山:今、経済もこういう商品とかも、全部やっぱり女の人中心で回ってるから、
もう少し男の人に頑張ってほしいなっと思って。
あれも実は、女の人を題材にして買ってもらうようにしてるんですけど、
ちょっとずつ切り崩していくための第一歩で。
浜:どう、どうなっていくんですか? それって。
山:うーん。なんかね、男の人がどんどん白痴化していってる気がして。
なんか難しいこと考えずに欲望だけで生きていってるような。男の人は特にね。
浜:女の人はそんなことないと思いますか?
山:女の人は、理想を、とにかく求めるなーっと思って。色んな理想。
浜:そうかも。
山:そう。
浜:そうかも。
山:うん。そうなんです。
浜:じゃあ、第一弾としては、
さっきおっしゃったみたいな問いかけ的なことが、一歩目みたいなことなんですかね。
山:そうですそうです。
――自分たちの生の言葉をちゃんと喋ってほしいってこと
浜:喫茶店を選ぶ基準ってあったんですか?
山:ある意味、僕たちが選んでる時点で、
ちょっとフィルターがかかってしまってるとこあるなぁと思ってて、ずっと。
他の人が選んだらもっとふんわりしたとこが、どっちか言ったらハードコアな店ばっかり。
ルックスは、例えば「つばめ」さんとかはふんわりしてるイメージやねんけど、
お話聞いたら一番実は厳しい人やったし(笑)。
笑顔で喋らはんねんけど、なんか、すごい美意識がしっかりしてて。
浜:「30の質問」のコーナーとかあるじゃないですか。
山:面倒な、、
浜:あれもなんかその本人の、暴くっていうか、
山:うん、そう。インタビューは“話し言葉”で、アンケートは“書き言葉”。
浜:あ、書いてもらってるんですね、あれ。
山:そう、書き言葉。その対比を、ちゃんと。
浜:その対比を見せることの効果って、それだけ本人が見えるってことですか?
山:そういうこと。それで一斉に並べる、他の人たちと。
あれでそれぞれのキャラクターが浮き彫りになる。
浜:科学者みたい!
山:いやいやいや。僕好きなのは並列するキャラクターが共存してるの、僕好きなの。
浜:いっぺんに見れる?
山:そう。カッコいいでしょ、なんか。全員がすごい粒ぞろいの人が揃ってる。
浜:じゃあ(お店を)どうやって選んだかっていうのは結局、
山:人かもね。人。
――デザイン・イラストについて
浜:デザインとかはイラストを描かれた方がまとめてやられたんですか?
山:そう。イメージとかは全部こっちが伝えて。
浜:イメージって、「女性に受けそうな」、とか、
山:女性向けと、こういう雰囲気にしたい、時代性をなくしたいとか、
雑誌のレイアウトの世界観を崩したいとか、そういうのですかね。
浜:全部、崩す、崩す。
山:そう。基本的にね、セオリーを崩す方ですから。
浜:デザインもそうだったんですね。
山:よく見たらね、ページのね、位置も違ったりするんです。全部、紙に色載せてるし。
浜:そうなんですか!
山:そう。古い感じにして。
一回コピーをとって再加工して、粗い感じにしたりとか。
浜:店ごとでも違いますもんね。写真のバラつかせ方とか、絵の大きさとか。
山:こういうのありえへんからね。今の雑誌じゃ。
こういう思い切った、手書きのレイアウトやから。
浜:だから懐かしい感じがして、とっかかりもある感じに見えてたけど、でも実は崩してたんだ。
山:そう、崩してる。
浜:今を。
山:そうそうそう。
――ホホホ座、新メンバー募集!?
浜:“ホ佐”ってなんですか? 募集してるじゃないですか?
山:ああ。本当に2軍メンバー(笑)。2軍メンバー。
浜:何する(2軍メンバー)?
山:あの、たけし軍団セピアみたいな。
浜:セピアがあるの!?
山:要は、なんて言うか、僕たちホホホ座の手助けをしてくれる、補佐補佐。
浜:なるほどなるほど。ボランティアで、募っている?
山:そう。頑張ったら点々がついてホホホ座になれるっていう。
浜:頑張りによっては、 同じメンバーに?
山:そうそう。
浜:どこに住んでてもいいんですか?
山:いいですよ。・・・狙ってる?
浜:いや〜、分からん、私にできること何があるがやろ。
山:(笑)
浜:でも、なんか、(インタビューして)いいのかな、と思いつつ、聞きたいと思ったし、
山:はい。
浜:こういう動機を、殺したくはないなと思って、
山:はい、はいはい。
浜:で、聞いてますけど、この時点で、自分がもうホ佐なんじゃないかって、
山:補佐補佐!ホ佐やねぇ!
――――――((私的インタビュー:2014年9月ガケ書房にて))――
※往復便多:「私がカフェをはじめた日。」についてくる初回限定副読紙。
山下さんと松本さんの対話形式で、企画が始まる経緯や、
実際のコンセプトなど、大変分かり易く書かれています。
※松本伸哉さん:ホホホ座のツートップ。山下さんと共に、企画・編集・取材を担当。
※コトバヨネット:松本さんのお店。山下さんも実態を掴みかねているお店のHPはこちら
※ホホホ座の紅一点:早川宏美さん。デザイン・イラストを担当。
※加地猛さん:ホホホ座の「あいづち・広報」担当。加地さんのお店[100000t]のHPはこちら
※幻の展示:本のきっかけになった展示を山下さんに依頼したのは、
本の中にも掲載されることになる「雨林舎」さんだったとのこと。
※山下さんのインタビューブログ「タブーインタブー」はこちら
写真右:ホホホ座座長・ガケ書房店主:山下賢二さん
写真左:インタビュアー・書記:浜口寛子
***改めてホホホ座先鋭の第一弾!本のご紹介****
『私がカフェをはじめた日。〜どうして彼女はカフェなのか〜』
話題の企画集団・ホホホ座による編集本第1弾。
京都で一人でカフェを切り盛りする女性店主たちの開業まで
を男性目線から聞いた特殊インタビュー集。
初回版特典:ホホホ座精鋭による制作裏話往復書簡「往復便多(おうふくびんた)」付
色々ある仕事の中で彼女たちはなぜカフェなのか? 特別寄稿:よしもとばなな
<目次>
マニアックスター
ひだまり
雨林舎
つばめ
KAFE工船
チタチタ喫茶
喫茶ウズラ
・京都女性店主への30の面倒な質問
・あの空気(よしもとばなな)
・私がカフェをはじめた日の詩
・ホホホ座のご案内
〈以上、ガケ書房HPより抜粋〉
※初版本の在庫がわずかになっているそうです!
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