2017年8月14日

鎌倉に行くと、誰かに会う。

鎌倉に行ったら、駅前で栗山に会った。

「俺、医者に缶ビール止められてるんだ。」

と言いながら栗山は缶ビールを片手に歩いていた。

読んでいる本の続きを買いに本屋に向かっているというので着いてゆくことにした。
西口の本屋になかったから、東口の本屋へ。

本屋で栗山は3冊もの文庫本を片手に「あった!」と言っていた。
そして「俺さ〜、やっちゃってさ〜!
家にあった1巻を読んで、面白いと思って新しいのを買ったら、どうやらそれが最終巻だったらしくてさ!上杉謙信の親のこと書いた話なんだけど、なんか上杉謙信がもう大人になって活躍してるからさ〜、おかしいなとは思ったんだけどね!それ読んじゃったから、今その間を埋めてるところ!」
と、栗山は本屋で大声で自分の読書の現状を語った。

会計を済ませ、オススメのバーもしまっていたので
わたしのリクエストにより喫茶店に行くことに。

パフェを頼もうとすると、
「パフェなら〇〇(別の店)の方がいい。ここならホットケーキを頼むべきだ。」
と栗山は言った。しかしホットケーキの密度を受け入れる空腹のないわたしはチョコレートパフェを頼む。なおも栗山は隣の席のチョコレートパフェを見て、「クラシックだからやめたほうがいいんじゃない」みたいなことを言っていた。栗山は何にするのかと思えば、季節のパフェを指さしていた。
店員が「お決まりの頃にうかがいます」と言っていたのを忘れたのか、栗山は「すいません!」と声を上げ、それでも気づかれないともう1トーン大きく太い声で「すいませーん!」と叫んだ。
わたしは『仁義なき戦い』を腕が飛んだ序盤のシーンで見るのをやめてしまったが、出てくる男性はみなこんな声で喋ると思う。喫茶店にいるすべての客が、物騒な顔で栗山のことを見ていて、「この人はこれから、桃のパフェを頼もうとしているんです」と言ってあげたかった。

栗山は本屋でも、喫茶店でも、缶ビールを手放すことはなかった。
金属アレルギーの疑いがあり、背中にぽつぽつができているという。
季節が変われば治るといいね。