2016年8月29日

夢と常識

劇団をやめて、
わたしはいくつかのものを失ったかもしれないが、
そのかわりにもどってきたものもある。
友人だ。


―― 3年前の夏 ――

「そんなの常識だよ。」

と、よっちゃんに言われた。

【レベルを上げるために、メタルスライムを倒すことは常識である】
と、今助手席にいるよっちゃんは、彼女の車を運転している私に言う。

「そうなんだ。」

と、私は冷静に答える。

よっちゃんは、
自分でドラクエをやったことがないのに、
お兄ちゃんの冒険しているのを見て、その “常識” を覚えているらしい。
私は自分でドラクエをやったことがあるのに、
全くそういう “常識” を覚えてもいない。

【メタルスライムは逃げ易い】ということも常識だ、
とよっちゃんは言ってから、助手席で眠りに落ちた。

私の家についてからも、よっちゃんは場所を和室に移して眠り続けていた。

よっちゃんは今日も夜勤明けだ。

眠る彼女の横で、
約15年ぶりにトライしているドラクエをしている。

30分程経った頃、よっちゃんはもそっと起きて、
ぽーっとTV画面を見ていた。

そしておもむろに、

「夢見た。」

と言った。

「どんな夢?」

と聞くと

「メタルスライムが出てきた。」

と言った。

そしてつづけて

「『メタルスライムがよく出る場所はどこですか?』
 ってメタルスライムに聞く夢。」

と言った。

【メタルスライムがよく出る場所がある】というのも
きっと “常識” なんだろう。

ああ、メタルスライムがこんなに近い。

メタルスライム2